―木曽岬干拓地におけるチュウヒの繁殖と三重県によるメガソーラー設置などの開発問題―

木曽岬干拓地とは

木曽岬干拓地

1966年に農林省が農地利用を目的として愛知三重の県境の木曽川下流の干潟の干拓を始めました。 

1973年に干陸した干拓地の広さは443haです。周囲は堤防で囲まれ、土地は水面下45cm~50cmであり、流入する河川はなく、ポンプによる排水で現在まで維持されています。

 

チュウヒの繁殖地

木曽岬 チュウヒの幼鳥チュウヒの越冬する個体は日本各地の葦原で見られますが、夏に繁殖する個体はごく僅かです。そして「その一部は木曽三川下流域で繁殖している」ということが以前から知られていました。

1980年代にこの干拓地でもチュウヒの繁殖が確認されました。また、ヨシゴイも繁殖しました。

2002年から当会は愛知県野鳥保護連絡協議会(日本野鳥の会愛知県支部・名古屋鳥類調査会など)と共にチュウヒの繁殖記録を取っています。

2008年に開催されたチュウヒサミットでの集計によると日本でのチュウヒの繁殖は50つがいから100つがい程度と考えられています。東海地方で継続的にチュウヒが繁殖しているのは、木曽岬干拓地以外にはありません。この干拓地以外でも繁殖を試み、稀に成功する場所は何か所かありますが、どこも繁殖行動が継続しているとはいえない状況です。

木曽岬干拓地の開発の経緯

1973年 干陸後、社会情勢の変化により農地としての利用価値が下がり、農地にされず、県境も定まらず、そのまま放置されていました。その間に、葦原などの湿性草原を中心とした二次的自然が再生しました。普通の平地とは異なり、高木類は育っていません。

1994年 県境が確定。

2001年 三重県と愛知県が農水省から干拓地を購入。両県は高速道路以南を含む北側の173.7haを改変し、運動公園とする利用計画を策定。県条例に基づくアセスメント調査を行いました。三重県は、調査結果に基づき、50haを保護区とすれば3つがいが繁殖できるとする結論をだしました。

2006年 さらに、三重県と愛知県は高速道路より北側の盛り土を始めました。これにより、チュウヒの北側での採餌が不可能になりました。また、アセスメントの結論に基づき、南側の一部約50haに池を掘削し、チュウヒの繁殖の保護区としました。なお、チュウヒはこの保護区では一度も繁殖していていません。

木曽岬干拓地に建設されたソーラー発電

三重県はその後、当初デイキャンプ場などの計画を変更して太陽光発電を誘致し、丸紅がそれに応じて、2013年に工事に着手、高速道路より南側の78haに49MWの発電能力を持つ、メガソーラーパネルが設置されました。

野鳥保護団体の活動

1993年 三重野鳥の会と愛知県野鳥保護連絡協議会は連名で農林水産大臣宛てに同干拓地のサンクチュアリ化を申し入れました。また、同年から干拓地に隣接する鍋田干拓地で探鳥会が始まり、鳥類生息のデータを取り始めました。

2001年 第1回木曽岬フォーラム開催。

2002年 干拓地の野鳥生息状況の立ち入り調査を開始し、現在まで継続して毎月1回おこなれています。

日本野鳥の会三重と愛知県野鳥保護連絡協議会では、探鳥会を兼ねた鳥類調査を毎月第4日曜日に、1993年から継続して実施しています。

チュウヒの繁殖の現状

2002年から2010年までは3つがいあるいは2つがいが繁殖行動に入り、繁殖が全く成功しない年は稀であり、1ないし3つがいが繁殖に成功していました。巣立ち雛も多い年には6羽 観察されました。

チュウヒ

しかし近年は繁殖を成功するつがい数が減りました。2009年には2つがいが繁殖に成功しましたが、その後3年間は一つがいも繁殖できていません。幸い、2013年と2014年は1つがいが繁殖に成功しました。木曽岬干拓地は関東地方以西で、チュウヒが今でも継続的に繁殖できる貴重な場所です。今後も開発から守る必要があります。

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