この冬、ナベヅルが中南勢地方で越冬しました。三重県では2期連続の越冬で、しかも今回は48羽と多数です。ナベヅルは鹿児島県出水市で集団越冬しており、鳥インフルエンザなどで大きな被害を受ける危険性があり、越冬地の分散が望まれています。今回の越冬が成功すれば、三重が恒常的越冬地になる可能性があります。
三重県内で越冬していたナベヅルは繁殖地へ向けて旅立ちました。越冬していた48羽のうち、46羽は3月16日に、残りの2羽も同25日に旅立ちました。1羽の脱落もなしに冬を過ごすことができました。地元及び、野鳥関係者の方々のご協力に感謝いたします。また、自衛隊明野航空学校には、飛行を配慮していただきました。感謝申し上げます。
この秋にナベヅルが三重に再来することを期待しましょう。
ナベヅルは絶滅危惧種II類(VU)に指定される、東アジアに生息するツルで鹿児島県、出水市が主な越冬地で約15,000羽が越冬しています。国外では中国と韓国で越冬しているとされていますが、詳しい情報はなく、ごくわずかではないかと推定されます。また、国内では山口県周南市でも毎年越冬していますが、近年減少傾向で、この冬は9羽と発表されています。その他に恒常的な越冬地はありません。世界に生息するナベヅルの90 %以上が出水で越冬するという、異常な集中率です。鳥インフルエンザなどの疫病で大量の野鳥が死ぬおそれがあるため、越冬地の分散は全国的な課題です。注1
三重県では昨冬も4羽が越冬しており、今回の越冬で2期連続です。無事越冬し、来季も訪れるなら、恒常的な越冬地になる可能性があり、ナベヅルの越冬地分散になるでしょう。
当会では11月中旬の飛来直後に情報を入手し、以降、ねぐらの把握、採餌場所の把握などに努めてきました。本来であれば探鳥会を開くなど、会員に広く知らせるべき情報なのですが、無事越冬を終えることを最重要と考え、会員への積極的な情報提供は行いませんでした。むろん、会員を含む地元のバーダーのいくばくかには情報が伝わり、また県外からもバーダーが訪れていますが、現状では、少人数に限られ、無事越冬を続けています。ナベヅルが北の繁殖地へ帰るまで無事越冬してくれるよう、温かく見守りましょう。
[注1]昨年2021年12月イスラエルで鳥インフルエンザが発生し、越冬中、あるいは渡りで通過中のクロヅル5000羽が死んだとのことです。また、鹿児島県出水でも過去にナベヅルなどが鳥インフルエンザで少数羽死んだことがありますが、大量死はまぬがれています。