鈴鹿山脈は三重と滋賀の県境で、主峰御池岳は1,240mである。北部は1,000mクラスの山が続き、南部は900m級の山となる。標高が低い割りには積雪が多く、多様性に富む生態系となっている。
北部藤原岳、御池岳の頂上は準平原であり、かつては笹原と灌木で覆われており、イヌワシの狩り場であった。近年はシカの食害により、笹原が失われた。北部は落葉樹林や混合林で覆われ、南部はスギ、ヒノキの植林が多い。藤原岳にはかつてイヌワシが生息しており、繁殖行動も見られた。しかし、現在は滋賀県方面から稀に飛来する程度である。一方クマタカは北部南部を通じていくつかのつがいが生息し、繁殖している。
この山脈の山腹から頂上付近の尾根にかけて、スズタケの笹原が優先しており、以前はコルリ、コマドリが繁殖していた。しかし、近年はシカの食害により、笹原が減り、繁殖は見られない。コサメビタキ、キビタキは近年繁殖域を広げ、鈴鹿山脈で繁殖している。渓流とそれに接する山肌ではオオルリ、ミソサザイ、カワガラス、キセキレイなどは多く見られる。かつて山間から山麓の渓流で見られたヤマセミは近年ごく少なくなった。渓流の工事の影響で、魚類の棲む場所が狭められたのが一因であろう。
カラ類、シジュウカラ、ヒガラ、ヤマガラ、コガラは普通に見られ、ウグイスも多い。ヤブサメも棲息する。また、キツツキ類もコゲラ、アオゲラ、アカゲラは通年見られるが、オオアカゲラは稀であるが生息する。夏にはクロツグミのさえずりが聞こえる。ホトトギス、ツツドリ、ジュウイチなどトケン類も生息する。ヤマドリは多くないが、各所に棲息する。残念ながら、外来鳥類であるソウシチョウも各所で見られ、繁殖し、定着している。ただし、冬には標高の低い場所へ降りるようである。